Dewa mata!というとても繊細なタイトルの付いたこの曲も、Go!と同じく僕がバークリーの学生時代に書いた古い曲。Go!の紹介の回でも書きましたバークリーでのシニアリサイタルの最後に演奏した曲です。ギリギリまでタイトルが決まってなくて、最後の曲だったので「では、また!」って適当にタイトルつけてそのまま現在に至ってます。
僕のバークリー時代の先生で、ウエイン・クランツという本当にオリジナリティー溢れる物凄いギタリストがいます。彼はほんの短い間しかバークリーで教えていなかったのですが、幸運にも1セメスター(半年ぐらい)の間彼のレッスンを取ることができました。実はこの「では、また!」はその時にやった曲を作ってくる宿題で作ったものです。
最初はギターパートだけできたので持っていって見せると、
「せっかくならベースラインも書くといいんじゃない?」
と、彼の作曲のやり方とか、ベースラインの書き方を色々見せてもらって目から鱗でした。というわけで、ウエインの影響を多大に受けています。でも、彼のような洗練された感じはなく、僕らしく間抜けに仕上がっているので、自分らしくて良しとします。ちなみに僕の書いた曲で「Ofro song」というのがあるのですがその曲のベースラインを書くときもこの時のウエインのレッスンで学んだやり方を使ってます。というかベースラインを書くときは彼から習ったことが常に頭に浮かびます。
バークリー卒業後はニューヨークのジャズの主流のよりトラディショナルなジャズ(スイングするやつ)をしっかりできるようになりたいという思いがあったので、この曲は当時の自分の行きたい方向性とは違ったので、そのシニアリサイタル以来10年以上演奏したことはなかったのですが、よく一緒にやっていたアンソニー・リーという本当に大好きなドラマー(でも突如連絡が取れなくなってしまって今は消息不明なのです、元氣にやってるといいのだけど)と一緒にやるようになった際、この曲は彼にぴったり合うなと思って、また演奏するようになりました。↓はそのアンソニーとの2014年演奏を見つけたのでよかったら聴いてみてください。
話をウエインに戻しますが、彼は本当に素晴らしい先生で、何かボストンに住んでいる他のバークリーのギターの先生とは違ったニューヨークに住んで第一線でやっているミュージシャン独特のオーラが出ていました。バークリーでは本当に素晴らしい先生にたくさん習うことができましたが、多分一番影響を受けたのはウエインのレッスンでした(自分の演奏スタイルとは全然違うのですが)。ウエインが彼のスタイルに行き着くまでの歴史とか、色々と飾らずに素直に話してくれて勇氣をもらいました。彼は、本当に自分だけのスタイルを作りたかったので、自分のやりたいスタイル以外のスタイルで弾かなくてはいけないような仕事は全部断って、時には皿洗いの仕事をしながら自分のやりたい演奏だけして練習に勤しんだようです。
彼のレッスンで特にシビアだったのはタイムとリズムのことです。レッスン中に録音した演奏のプレイバックを聴きながら、ここの16音符がちょっと早いね、とか本当に細部まで僕の演奏をチェックしてくれて、彼もそういう風にシビアに自己の演奏と向き合って今の彼の演奏があるということを学べた素晴らしい体験でした。その後ニューヨークに移り住んで、一線でやっているミュージシャンは本当に細部までタイムにシビアで、今でもタイムのことは演奏時にとても氣をつけていることです。
こうやって、たまに過去を振り返るとアメリカに来たての初心に帰ることができるようでとても氣がひきしまります。明日はいよいよこのシリーズ最終回の10回目です。明日もお楽しみに。
では、また!