Joyful Birth ライナーノーツ


山田憲吾監督から映画の主題歌の制作を依頼されたのは映画の締め切りの僅か1ヶ月前でした。Joyful Birthというお産の映画だという。急な依頼に驚きつつも直感的に是非やってみたいという衝動が湧きオファーを承諾しました。

まだ編集も終わっていないラフな映像を見て驚いたのは、そのあまりにも静かでゆったりとしたお産の風景でした。僕自身、我が子のアメリカ・ニューヨークの病院でのお産に二度立ち会いましたがその医療機器に囲まれた物々しい雰囲気とは全然違うものだったのです。

子供を産むという行為は本来自然に備わっているものであり、安心して自然にまかせてその時を待てば母子共に楽なだけでなく、気持ち良くお産を乗り越えることができる!目から鱗の映画でした。

実は、僕自身いつも作曲するにあたり俗にいう”産みの苦しみ”は感じません。ただ心を無にしてギターを抱えながら、アイデアが降りて来てくれるのをひたすら待つのです。Joyful Birthと一緒じゃん!と思いました。

この主題歌を作詞、作曲するにあたりラフの映像を見ながらひたすらギターを弾いて降りてくるアイデアを待ちました。そして待って、待って、待って、それを研ぎ澄ましたのがこの曲です。

歌詞も同様に自然に降りてきてくれました。それを書き留めたものを山田監督、そして歌ってくれた妻、久里子にも意見を聞いて何度か修正して、曲は完成しました。そして、久里子の優しいお母さんの声が曲に命を吹き込んでくれました。

この映画でも出てきますが、お産の現場でお父さんの役割も大事です。ということでお父さん(僕)もコーラスで優しくサポートしているつもりです(笑)。

この曲のこだわりの一つはチューニングです。昨今はA=440~442でチューニングされることがほとんどですがこの曲はA=428。これは山田監督が実際に色々試して体感的に最も気持ち良いチューニングなんだそうです。僕自身も過去にA=432などは試してみたりしましたがA=428は初めてでした。実は僕の誕生日が4月28日で、縁を感じて試してみました。A=440より随分低いのも手伝ってよりゆるりとした安らげる音になっている気がします。

曲が出来てから、自宅で録音、ミックス、マスタリングと今回は全て自分で手掛けました。自宅出産ですね(笑)幸い何日も一日中作業を続けてなんとか期日より少し早めに曲が納品できました。

間に合った!とホッとしていると、山田さんより劇中の音楽制作の相談を受けました。

確かに、試作版に使われていた音楽はいわゆる著作権フリー音源であり、勿論この映画の為に作られてはいません。実は心の中で音楽が全体にバラバラな印象で少しもったいないなと思っていたので、自分がちょっとやってみたいと申し出ました。初めての経験でしたが、いつか映画の音楽もやりたいなと思っていたので。

締め切りまで時間がなかったのですが、主題歌と同様に、映像を見ながらひたすらギターを弾いていたら降りてきたアイデアを録音したものがこのサウンドトラックです。作曲といっても一切譜面には起こさずその時に思いついたものを時に即興で演奏しました。できるだけ自然体で、音楽が自然にでてくるのを待ったことでこの映画のコンセプトにもとてもマッチした音になっているかな?と思っています。

Joyful Birth、本当に素敵な映画なのでぜひ見てみてくださいね。

そしてこのサウンドトラックを聴いて映画のことを思い出していただければ嬉しいです。

この音が皆さんの生活の安らぎになれば幸いです。

阿部大輔

作品の詳細を見る

コメントを残す